Doctor's Column 院長コラム

2020.07.10更新

他院で治療した根管治療のセカンドオピニオン、再治療希望の患者が当院において最近かなり多く来院されます。

症状としては
他院で根管治療期間中に発生した痛みがなかなか取れない、
治療中の部分に膿の出口ができて(腫れて)治らない、などです。

このような症例を再治療させて頂き、当院では

「歯科用CTとマイクロスコープを連動させた根管治療」
穿孔部を封鎖する「MTAセメント」

を効果的に活用することにより、
転院されてきた患者さんの8割ほどは治癒に導いております。

このような根管治療予後不良症例を数多く診させて頂いているなかで、いくつかのパターンがありますので、今回それらをまとめてみました。

1本当にごく基本的な根管清掃、拡大を行っていないので根尖病巣が治癒しない
2清掃器具が根管の中に入っていく道を作れていない(根管内の清掃ができていない)
3歯根が折れている
4また根管内の清掃はなされているが、根尖を刺激しすぎて、根の周囲の歯根膜に炎症を起こしてしまい、咬むと痛みが出るなど
5あと、咬合(噛み合わせ)の要因で、持続的に刺激が加わり痛みが取れにくい場合などもあります。
   また種類は違いますが、噛み合わせに関連するものとして、根分岐部病変というものがあります。(6に書きます) 

6歯周病が進行しており、根尖病巣単独ではなく、歯周病で骨の欠損が進行した部分と根尖病巣が繋がってしまっているような場合があります。
   根分岐部病変ですが、根尖病巣ではなくて歯周病の一症状として発現する場合や根分岐部に穿孔を来したり、あるいは根尖病巣が根分岐部まで拡大している場合など

   原因が多岐にわたります。

このように、いくつかの治癒しない原因があります。


詳細を解説しますと、

1はしっかりと丁寧に清掃拡大をすれば治癒していきますが、このように治らない原因は術者の技量や、その歯科医院で根管治療にしっかりと時間をかけていないのが主な  原因であると思われます。
2は根管が曲がっていたり(湾曲根管)、細かったり(狭窄)、根管清掃に使用する器具であるリーマー、ファイルなどが根管治療中に入らなくなり、道に沿って進んでいかない、その結果根尖付近に細菌起炎性物質が残存し、化膿が収まらない。あるいはもともとの根管ではないところにエンジンやリーマーなどで穴をあけてしまい(パーフォレーション)その部分が化膿してしまっている場合などがあります。  
→根管が開かない(道が作れない)場合はもとも詰めていた根管充填材を取り除いた後にマイクロスコープで根管を探索しながら道を掘り進めます。そそまま無理に掘り進めるとパーフォレーションをおこす危険性があるため、道が開かない場合はこの時点でCTを撮影して、どこまで掘り進めているかを確認します。このようにマイクロスコープは根管内、CTは根管内と外の位置関係を把握するように連動させて使用することによって、パーフォレーション(穿孔)させないようにして根管の道を作っていきます。
 湾曲根管などの場合は、細いファイルで根管の先端まで道を作った後の根管拡大操作をNi-Ti(ニッケル・チタン)ファイルで行うと、非常に作業効率が上がります。

3も、マイクロスコープとCTによって破折部分の確認を行います。根が折れている(歯根破折)、ヒビが入っている(クラック)場合は基本的にその歯を残すのは難しいです。

4は清掃拡大の技量の問題で、根管拡大作業はいくつかの原則があり、原則に則ったファイリング操作(基本的な根管清掃器具の操作)ができていないとよく起こりうること  です。

5は咬合のずれなどを確認し、ぐっと噛み合わせた後、負担が集中していないか、夜間の歯ぎしり、日中のくいしばりなどのいわゆるパラファンクションなどがないか確認 し、マウスピのース使用などで患歯への負担を軽減します。
6はいわゆるエンド・ペリオ病変といわれるもので、歯周病と根尖病変部分の病巣が繋がっているため、歯周病単独、根尖病巣単独といったものよりも状況はかなりシビア です。
このエンド・ペリオ病変はいくつかのパターンに分類され、そのパターンに従って治療を進めていくことになりますが、治療順序としては原則、根管治療が優先です。

   因みに、この中で出てきた「マイクロスコープ」、「MTA」、「Ni-Ti」ファイルは、近年における根管治療の3種の神器と言われています。


  そしてその他に、根管治療中に根管清掃拡大器具であるリーマーやファイルが根管内で折れてしまい、根管内異物として残ってしまう症例があります。
このような患者さんがセカンドオピニオンで当院を受診されるケースも多いです。
このような場合、前医から「根っこの中で器具が折れて残っています。折れた器具がすごく小さく、取り出すのが困難です。これが残っていると治らないので抜きましょう。」あるいは、折れた器具などは存在していない症例であっても、「こちらでは破折器具を取り出せないので、根管治療をご希望の場合は、他の医院で治療してもらってください」などと説明を受けられていることがあります。
 これは私の目からみると、手間がかかる根管治療を最初から行う意思が乏しく、早く抜いて、次の治療(インプラントなど)に移行しようという感じが見て取れます。こういう説明を行っている医院は、インプラントなどの高額診療を大々的に宣伝している場合が傾向として多いように感じます。
私はこれは非常に大きな問題として捉えており、敢えてここで警告を鳴らす意味で書かせて頂きます。

 あと、破折器具が根管内に残留しているようなケースでも取り出す必要がない場合もあります。破折器具が残っている歯根の先端に根尖病巣が存在するような場合は取り出す必要がありますが、このような場合もマイクロスコープと破折器具除去専用の超音波チップを駆使し、拡大視野で処置を行うことで破折器具を取り出すことが可能で す。

 これらの治療で治癒しない場合は、最終的な処置として、歯根端切除術などの外科的対応(手術的対応)を行います。
私も根管治療の技術が未熟であった頃は歯根端切除術を行う機械が多かったのですが、最近は根管治療のみで治癒することが多くなり、当院における歯根端切除の適応症例は、根尖病巣が大きく、経過が長くなっているようなケースに限られてきました。

 根管治療で根尖病変が治らない、歯根端切除術を行う外科的スキルを持ち合わせていないDr.は基本、臨床症状がない場合は経過観察、痛みや歯肉の腫れや膿の出口がふさがらないなどの症状がなくならない場合は患者にその歯の抜歯を宣告することになり、転院の機会を作ってしまうことになります。
 今回書かせて頂いた通り、根管治療をしっかり行っていくと、根尖病変は治っていく場合も多いのです。
根管治療の経過が良くない方は、今回の記事を是非、参考にしていただければと思います。

投稿者: まえだ歯科

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