Implant
インプラント

インプラント治療の変遷~私とインプラント治療

私が口腔外科在職中に、入れ歯を使用していた患者様がインプラント治療を受け、歯が入った後に非常に喜ばれているのを目の当たりにし、インプラントの有効性を確認してきました。
1952年にスウェーデン、イェ-テボリ市のブローネマルク博士が研究のためにウサギの頚骨に埋入した純チタン製の装置が骨組織と強固に結合することをと偶然に発見しました。博士はこれをオッセオインテグレーションと定義しました。その後、約10年間の基礎的な研究を経て、インプラントの臨床応用に至っております。
その後暫くの間、様々なインプラントが開発され、臨床応用されましたが、チタン製のスクリュータイプ以外のインプラントは結果が不確実で失敗も多かったのが現状でした。しかし、私が口腔外科に在職していた時期はそういう時代が過ぎ去り、スクリュータイプのインプラントが全盛期を迎える時期で、その頃行われていたインプラントの治療の成功率、有効性を身を持って感じております。
ただその頃はインプラント治療は未だ成熟期には入っておらず、勿論咬むことは出来るのですが、未だ手術時の患者側の負担(外科的侵襲;術後の痛み、顔の腫れなど)が大きかったり、審美的にインプラントの歯を作ったりするところには限界がありました。
ここ10年程でインプラント治療は、様々な臨床データの蓄積から科学的な検証が進み、手術をより楽に受けられるよう、より治療期間が短くなるよう、より審美的な歯が入れられるよう様々な研究が進められ、進化を遂げ、現在は成熟期に入ってきております。
その後、私自身も様々な研修会に出向き、時代に則したインプラント治療を学び、患者様側に負担の少ない治療、審美的な治療を提供できるような治療技術を習得して参りました。そして、現在も日本口腔インプラント学会、ノーベルガイドプランニングセミナー(大阪)、DC(デンタルコンセプト)21等で、研鑽を続けています。


私は25年間の歯科医師としての経験から現在の歯科医療において歯が無くなった場合の治療は、いろいろな状況にもよりますが、現状では総合的に判断した場合、インプラントの咀嚼能力や、患者様のQOLの向上に貢献できる部分は大きく、ブリッジや入れ歯と比較し、優れている点が多いように感じます。特に開業後15年間で自身の症例の長期経過を観察し、ブリッジの土台の歯がいかに折れやすいか(歯根破折)、身をもって経験をしてきました。長期的に咬み合わせを維持できるかどうかの分岐点は、歯がなくなったあとの治療選択(欠損補綴治療)にかかっているといっても過言ではありません。インプラントを適用することにより残っているご自身の歯に負担がかかりにくくなり、結果的に歯が残りやすくなることを随分と経験してきました。
他の治療、1、ブリッジでは特に問題のない歯を削って治療しなくてはならず、削った歯はどんなに精度の高い被せ物を装着したとしても辺縁から虫歯になるリスクは多かれ少なかれ、避けられません。またブリッジは少ない本数で歯を支えるため土台の歯に負担が掛かり易くなり、神経のない歯の場合は根の破折が起こり易くなります。折れた歯は状況にもよりますが、抜かないといけなくなる可能性が高いです。また2、入れ歯(義歯)では入れ歯の留め金がかかる歯は非常に横に揺らされる傾向があり、やはり歯に負担が掛かり易くなります。
図のように(ブリッジや入れ歯)では、時間の経過とともに治療した歯に負担がかかり、抜歯に至る確率が多くなり、 インプラントの様に歯の欠損(歯が無くなること)の拡大を止めることは出来ないでしょう。
今から10数年前ごろ、一時期インプラントの周りの歯肉や骨の炎症(インプラント周囲炎)が社会問題になりました。その後インプラント周囲炎の予防というものがインプラント学会党でも大きなテーマとなりいかにインプラント周囲炎を起こさないようにするか、あるいはインプラント周囲炎が発症した時にどのような対処を行うかといった具体的対策が5年くらいの年月をかけて整備されてきたように感じます。

当院のインプラントの特徴

当院で行っているンプラント治療の特徴について他のクリニックと比較しながらお話をさせて頂きたいと思います。


世界のトップシェアインプラント2社
トップダウントリートメント
インプラント周囲炎の予防
メンテナンスが行いやすいスクリュー固定式上部構造
難症例対応 (骨が少ない場合:上顎奥歯、下顎奥歯、前歯)
即時荷重治療、即時修復治療などのハイレベルな治療オプション

インプラントの特徴と構造

先に述べたように、従来、歯が抜けた後の治療法は両隣を削るブリッジやプラスチックの板や留め金から構成される取り外し式のいわゆる部分入れ歯が中心でした。これらの方法は一般的にほかの歯に負担がかかるため、治療後も暫くすると治療した歯がだめになり、歯を失う結果になることも少なくありませんでした。
インプラントの場合、そのような治療法と比較し、他の健康な歯に負担を掛けることなく歯を失った部分に対し、単独で治療を行うことができるのが特徴です。(図)


インプラントの構造は天然の歯に限りなく近く、噛む感覚や見た目(審美性)まで再現することができます。基本的にインプラントの構造は、顎の骨の中に埋め込むフィクスチャー(インプラント体)とそれを歯の部分につなぐアバットメント(土台)、その上にかぶせる上部構造(歯の部分)からなります。インプラントは単に骨のなかに入っているだけではなく、骨と化学的に結合したオッセオインテグレィションといわれる、噛む力に抵抗できるくらいがっちりした骨との結合状態になっています。(図)

当院におけるインプラント治療の流れ

カウンセリング

先ず患者様のお悩み、ご要望をお聞きし、インプラントについての概略を説明します。また、患者様の様々な質問にお答えします。
基本診査 レントゲン撮影、口腔内模型(型採り)(図)

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精密検査(CT撮影)

当院では殆どの場合、平面的なレントゲンだけでなくCTを撮影することによりインプラントを入れる骨の状態を立体的に(骨の高さ、幅、密度)把握し、治療計画を立てるようにしております。これにより、処置の時間の短縮、手術野の縮小(歯茎を剥ぐ範囲を少なくする)、が可能となり、より患者様にとって、負担が少なく(術後の歯肉の腫れ、痛みが少なくなる)、より安全な治療を行うことができるようになるでしょう。
当院では、ノーベルバイオケア社、ストローマン社と提携し、撮影したCTにおいて術者(私)がコンピューター上でインプラントを入れる位置をシミュレーションし、(患者様のご了解が得られましたら)ガイデッドサージェリー用のサージカルガイドを作成し、インプラントの埋入処置時に使用しています。


*コンピューターガイデッドサージェリー
ノーベルバイオケア社
ストローマン社

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診査結果の説明

手術の可否、術式についての説明、最終的な治療計画、および費用のお見積もりを提示します。

診査結果の説明
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手術前の治療

インプラントの細菌の感染の原因になりうる虫歯や歯周病の治療を必要に応じて行います。
(CT写真、シミュレーション写真、サージカルガイド写真)

CT画像によるインプラントオペのシュミレーション
(CT画像によるインプラントオペのシュミレーション)
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インプラント手術

局所麻酔で行います。簡易的な手術室を設け、手術器具等は完全に滅菌したものを用意し、できる限り無菌的な処置を行うようにしております。できるだけリラックスした環境で手術を受けられるよう配慮しています。

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インプラント埋入術式

インプラント埋入術式
インプラント埋入術式
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消毒、抜歯

手術後は通常、1~2回の消毒を行います。
手術後、10日前後で抜糸を行います。

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上部構造の作成、装着

手術後2か月~4か月の間はインプラント骨と結合するのを待ちます。

ぺリオテストやオステルを用いてインプラントが骨に結合(オッセオインテグレーション)しているか評価を行い、インプラントに歯を立てて噛むことができる状態か確認を行います。骨が柔らかい時など、骨との結合に少し時間がかかる場合があり、咬めるようにする時期(荷重時期)を遅らせる必要がある場合もあります。

上部構造の作成、装着

その後、精密な型取りを行い、インプラントの土台の部分と歯の部分を技巧所で作成、装着します。(イラスト)

上部構造の作成、装着

以下、インプラントの歯の部分のバリエーションになります。
(補綴様式のバリエーション)

上部構造の作成、装着
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メンテナンス、定期健診

インプラントを長期的に使用していただくために日常の歯磨きと定期的な検診、歯科衛生士専門のクリーニングが不可欠となります。

ノーベルガイドシステム

(スタンダードケース)

ノーベルガイドシステム
ノーベルガイドシステム
ノーベルガイドシステム

CT画像上で専用のソフト(ノーベルクリ二シャン)を持いて、インプラント埋入位置のシミュレーションを行う

術前のシミュレーション
術前のシミュレーション
術後レントゲン写真
術後レントゲン写真

術前に計画した位置にインプラントを埋入
上顎左右に計7本のインプラント(約2時間弱)

主訴

現在使用中の入れ歯がよく噛めない

治療期間

6か月

費用

100万円

リスク

インプラント手術後細菌感染およびメンテナンス期間のインプラント周囲炎

ストローマンガイドシステム

(スタンダードケース)

ストローマンガイドシステム

手術時に使用するサージカルガイド
フラップレス 歯肉を剥離しない(開かない)術式を選択

手術時に使用するサージカルガイド
術後レントゲン写真
術後レントゲン写真
主訴

左下入れ歯の調子が悪い

治療期間

6か月

費用

100万円

リスク

インプラント手術後細菌感染およびメンテナンス期間のインプラント周囲炎

ガイデッドサージェリー+即時荷重 症例

Before
before01
before02
インプラント埋入と同日に下顎に仮歯を装着
インプラント埋入と同日に下顎に仮歯を装着

下顎全顎欠損(無歯顎)
入れ歯を使用

After
after01
固定式の歯を装着した
after02
治療完了後レントゲン
主訴

下の歯が全体的に揺れて咬めない

治療期間

2年

費用

400万円

リスク

インプラント手術後の細菌感染およびメンテナンス期間のインプラント周囲炎

症例にみるインプラント治療

(部位別、タイプ別)

下顎臼歯部症例

比較的スタンダードなケースが多い部分です

下顎臼歯部症例
下顎臼歯部症例

下顎臼歯部GBR症例

骨は単なる立方体のような形態ではなく、先端部が先細りのようになっていることが多かったり、歯周病などの化膿性炎症により抜歯に至った部分の骨は治癒後(抜いた後)に骨のが減少しいている場合が多いです。そのような場合になくなっている骨の部分に骨を形成させる「骨造成」という治療オプションをインプラント埋入処置と併用して行う場合があります。最もよく行われる処置としてGBRという方法があります。

下顎臼歯部GBR症例
下顎臼歯部GBR症例
主訴

右下奥歯に膿の袋ができてなかなか治らない

治療期間

5か月

費用

40万円

リスク

インプラントおよび骨造成手術後の細菌感染のリスク

上顎奥歯

基本的に骨の高さが少ない場合が多いです。
その場合に用いる、ソケットリフト、サイナスリフトの症例です

ソケットリフト症例(症例1)

初診時レントゲン
初診時レントゲン
After
After
ソケットリフト症例
初診時レントゲン
ソケットリフト症例
ソケットリフト症例
主訴

奥歯が少なくなり咬みにくい

治療期間

8か月

費用

120万円

リスク

インプラント治療後の副鼻腔炎のリスク

サイナスリフト症例(症例2)

サイナスリフト術前
サイナスリフト術前
サイナスリフト術後
サイナスリフト術後
サイナスリフト6ヶ月後インプラント埋入
サイナスリフト6ヶ月後
インプラント埋入
主訴

現在使用中の入れ歯からインプラントへ変更したい

治療期間

1年

費用

120万円

リスク

インプラント手術後の副鼻腔炎のリスク

前歯部単独植立症例(症例4)

抜歯前
抜歯前
インプラント埋入後
インプラント埋入後

前歯部審美修復

前歯部審美修復
前歯部審美修復
前歯部審美修復
前歯部審美修復
主訴

前歯の歯肉がよく腫れる

治療期間

8か月

費用

35万円

リスク

インプラント治療後のインプラント周囲炎(細菌感染)
治療後の周囲歯肉の退縮(歯肉が下がる)

下顎前歯

骨の厚みが少ない部分です

下顎前歯
下顎前歯
下顎前歯
主訴

下顎の前歯がぐらぐらする

治療期間

8か月

費用

55万円

リスク

インプラント手術後の細菌感染、メンテナンス期間のインプラント周囲炎

インプラントオーバーデンチャー症例(症例8)

その後、精密な型取りを行い、インプラントの土台の部分と歯の部分を技巧所で作成、装着します。(イラスト)

インプラントオーバーデンチャー症例
術後レントゲン
術後レントゲン

臼歯部の骨が少ないため、前歯部分にインプラントを埋入し、インプラントを利用した入れ歯(義歯)を作製

インプラントオーバーデンチャー症例
インプラントオーバーデンチャー症例
主訴

下顎の入れ歯が安定しない

治療期間

5か月

費用

75万円

リスク

インプラント埋入後の細菌感染のリスク、メンテナンス期間のインプラント周囲炎のリスク

全額的なインプラント症例(症例9a)

before
Before
after
After
主訴

取り外し期の入れ歯をインプラントに変えていきたい

治療期間

2か月

費用

400万円

リスク

インプラント手術後の細菌感染およびメンテナンス期間のインプラント周囲炎

全額的なインプラント症例(症例9b)

before
Before
after
After
主訴

取り外し期の入れ歯をインプラントに変えていきたい

治療期間

2か月

費用

400万円

リスク

インプラント手術後の細菌感染およびメンテナンス期間のインプラント周囲炎

特殊な方法

骨がある部分にインプラントを埋め込む

骨の造成等は行わず、既存骨(元々ある骨)を利用し、インプラントを埋入します。
患者さん側の手術時の身体的侵襲(ダメージ)が少なくなります。

上顎結節部傾斜埋入

傾斜埋入症例
傾斜埋入症例
術後
主訴

右上奥歯がなく咬みにくい

治療期間

7か月

費用

100万円

リスク

インプラント手術後の細菌感染

口蓋側傾斜埋入症例
(初診時、埋入後レントゲン)

→のインプラントは上顎洞底線が低く、副鼻腔に突き抜けているように見えますが、CT画像bで見ると、口蓋側(内側)に骨が存在するので、その部分にインプラントを埋入しています。

口蓋側傾斜埋入症例
口蓋側傾斜埋入症例

下顎臼歯部 ショートインプラントの利用

下顎の骨の高さが少ない場合、高さを増大させる骨造成は侵襲が大きいため、近年では標準サイズより短いインプラントを連結させて用いる方法が比較的よく用いれるようになっています。

下顎臼歯部
下顎臼歯部
主訴

奥歯の歯肉がよく腫れる

治療期間

1年

費用

175万円

リスク

手術後の細菌感染およびメンテナンス期間中のインプラント周囲炎のリスク

骨が少ない部分に適用する方法として、既存の骨を利用してインプラント治療を行う方法が適応できないくらい骨が少ない場合は、「症例で見るインプラント」の項目で前述したGBR法、上顎奥歯(臼歯部)に用いるソケットリフト法のような骨の造成量が少ない方法以外に、骨を大幅に造成するブロック骨移植があります。下顎枝(下顎の親知らずの後方付近)の骨をピエゾージェリー状に採取し、骨の足らない部分に移植し、専用のピンで固定します。4~6か月の治癒期間を経てインプラントを埋入します。
(Kr.横山)

インプラントQ&A

インプラントQ&A

手術中の痛みはないですか?

局所麻酔を十分効かせて手術を行いますので、手術中は殆ど痛みを感じることはありません。また、静脈内沈静法や鎮静剤を服用していただき、意識がぼんやりしている状態で手術を行う方法もあります。

手術の時間は?

通常の1~2本のインプラントを埋め込む手術であれば、30分~1時間程度で手術を終えることができます。骨造成術を併用する場合や3~6本の場合は2時間程度の手術になります。

治療の期間は?

治療の期間はインプラントを埋め込む骨の状態によって多少異なってきますが、手術から歯(上部構造)の装着まで、下あごの場合で約2~3ヶ月、上顎の場合で約3~4ヶ月の期間を要します。最近では手術から 歯が入る期間が短くなる傾向にあります。

インプラントの手術後、すぐに歯(仮歯)をいれることは可能ですか?

インプラントを埋めてすぐに咬める状態にする即時加重という方法があります。この方法は基本的に全体的にインプラントを骨に所定の締め付け(トルク)でがっちりと骨の中に埋め、尚且つ仮歯を用いて連結固定するのが一つの条件です。
また前歯や小臼歯の1~2本であればインプラントが骨に所定の締め付け(トルク)で埋めることができれば手術直後から狩場を装着することができます。その場合はその部分のかみ合わせは弱くしておくことが条件です。(即時修復)

アレルギーの心配はないですか?

インプラントの素材はチタンという金属です。この金属は体の組織との相性(生体親和性)が良く、比較的アレルギーが起こりにくい部類の金属ではありますが、稀にアレルギーが起こる場合もあります。心配な場合は金属アレルギーの検査(パッチテスト等)を手術前に行い、チタンにアレルギーがないか確かめておくことをお勧めします。

インプラントをいれた後のトラブルは?

ご自身の歯(天然歯)と同様に歯周病になることがあります。また、かみ合わせや歯ぎしりの問題で、インプラントに負荷がかかりすぎ、インプラント周囲の骨がダメージを受ける場合があります。その結果、インプラントとインプラント周囲の骨の結合(骨結合)が破壊され、インプラントが脱落する場合があります。それらを防ぐには、定期的な検診を受けて頂き、クリーニングやかみ合わせのチェックをすることが大切です。

インプラントを埋める骨の量が少ない場合の対応は?

歯周病などで歯を失った場合、歯根の周囲の骨が無くなっています。また、顎の骨を解剖学的に見た場合、元々骨の量が少ない場合があります。よく骨が痩せていて、インプラントをいれることが出来ないといった診断を受けられた方がいらっしゃると思いますが、当院では様々な方法を用いて、患者様に比較的ダメージが少ないようにそのような部分にインプラントを埋入することが可能です。
この場合の対応はいくつかの種類があります。

人工骨や自家骨を用いて骨造成を行う

上記のような理由で骨の量が少ない場合に自家骨や骨補填材を用いて骨の造成を行います。

主な骨造成の方法
ソケットリフト(骨の高さが5mm程度ある場合)

歯槽骨上から上顎洞底までドリリングを行い、その後、洞底骨を粘膜ごと拳上し、その際スペースにドリリング時に採取した自家骨と骨補填材を混合して、填入し、徐々に洞底粘膜を持ち上げていきます。比較的低侵襲ですが、骨の造成量には限界があります。症例に応じ、後に示しますサイナスリフトとの術式の選択を行いながら、適応症を選んでいきます。

ソケットリフト
サイナスリフト(骨の高さが4mm未満の場合)

上顎洞前壁の骨を部分的に削除し、側方から上顎洞粘膜を挙上し自家骨と骨補填材を混ぜたものを歯槽骨と拳上した粘膜の間に充填し、骨造成を図ります。インプラントをサイナスリフトと同時に埋入する場合もあります(サイナスリフト+インプラント同時埋入)

サイナスリフト
サイナスリフト
骨補填材について

人間の骨はある程度柔軟性があるため、骨を圧縮したり、押し広げたりすることが可能です。専用のドリル(bone expansion drill)を用いて薄い骨を押し広げて行き、インプラントを埋入します。骨の造成を避けながら、骨のボリュームを維持できる、侵襲が少ない方法です。

べニアグラフト

下顎枝(下顎の親知らずよりさらに奥の部分の顎骨)などからブロック状の骨を採取し、専用のミニスクリューを用いて固定し、骨の欠損部に移植します。数か月間、骨の治癒を待ちます。骨幅や骨の高さが絶対的に不足している場合、それらの問題を改善させる方法として確実性が高いです。やや生体への侵襲が高いのと術野が2か所になるのが欠点ではありますが、近年、超音波を使用した骨切削専用の手術器具(ピエゾサージェリーデバイス)の開発により、術後の痛み、腫れがかなり軽減できるようになってきております。

骨がある部分にインプラントを埋め込む
上顎臼歯部(奥歯)

骨の造成等は行わず、既存の骨を利用し、インプラントを埋入します。
上顎口蓋部傾斜埋入
上顎結節部傾斜埋入

下顎臼歯部ショートインプラントの利用

一般的に必要なインプラントの長さは10mmという見解がでておりますが、最近では短いインプラントの生存率についてある程度長期的な経過報告が出てきており、当院でも4年前からショートインプラントを導入しております。基本的に、1本ではなく、複数のインプラントを連結固定して用いるとが条件です。
上下顎(特に下顎)の骨の高さが低い場合、高さを増やす骨造成を行う場合、侵襲の程度が少し大きくなります。このような時に骨造成を避けたい場合は、ショートインプラントを利用することが非常に有効です。

薄い骨をノミやドリルで押し広げる(リッジエクスパンジョン)

人間の骨はある程度柔軟性があるため、骨を圧縮したり、押し広げたりすることが可能です。専用のドリル(bone expansion drill)を用いて薄い骨を押し広げて行き、インプラントを埋入します。骨の造成を避けながら、骨のボリュームを維持できる、侵襲が少ない方法です。実際は歯列の中間付近の歯(小臼歯部分)に適応されることが多いです。

実際はこれらの方法を適宜選択していくことになります。どの方法を選択するかはいずれの方法にも一長一短があり、術者(Dr,)により意見が分かれるところですが、世界的な潮流としては、骨造成など、患者に負担がかかりやすい治療を回避し、骨がある部分にインプラントを埋め込む方法が選択される傾向になりつつあります。

インプラントの費用は?

インプラント治療は保険外診療(自費診療)になります。手術の費用(\20~25万)+土台(\2~3万)+歯(上部構造\8~12万)の費用でインプラント1本あたり約35万円(\30~40万)が平均的な費用になります。また、骨造成術など追加の処置を行う場合は別途の費用が必要になります。

インプラントの成功率は?

約95%以上の成功率が一般的です。私個人のインプラント成功率は、約200症例、1000本を行っており、約97%です。それだけ近年のインプラント治療は様々な研究が進み、システム化されており、成功率は非常に高いのです。

インプラントの生存率は?

一般的なデータとしては、埋入から10年経った後の生存率は約90%とされています。

当院で使用しているインプラント
ノーベルバイオケア

世界で最も歴史があり、研究データの蓄積が豊富
10年保障あり
リプレイスセレクト(写真)
ブローネマルク(写真)

ストローマン

表面にチタンプラズマコーティングを施し、2ヶ月で骨と結合します
10年保障あり(写真)

プラトン

国産のインプラントで、比較的安価な値段で提供させていただけます。(写真)

カルシテック

ハイドロキシアパタイトコーティングにより早期の骨結合(骨とインプラントが早くつく)を獲得します(写真)

インプラントメンテナンス

インプラント用超音波チップ
エアフロー

他院で埋入された(施術された)インプラントの取り扱いについて

転居、閉院、インプラントのメンテナンスが施術医院で受けることが出来なくなった場合、あるいは転院を希望している場合で、当院でインプラントのメンテナンスを希望されている場合、状況を詳しく問診させて頂き、レントゲンなどの必要な診査をさせて頂いたうえで、当院のインプラントメンテナンス内容をお話しし、ご了解が得られましたら、当院のプロトコールに従って、インプラントメンテナンスを実施させて頂きます。


他院でのインプラント体(根の部分)の破折、アバットメント(土台の部分)の破折、上部構造(歯の部分)などに対しても、患者様が当院で修理(リカバリー)を希望されている場合は、メンテナンスと同様に、先ず患者様から状況をお聞きし、その後、当院のリカバリーシステムをお伝えし、ご了解が得られましたら、対応をさせて頂きます。
世界中のインプラントシステムの種類は100種類以上あると言われています。
(上記の様なトラブルが発生した場合、当院で採用しているインプラント以外のシステムであっても、他社のドライバーなど、インプラントのネジの締結する器具を取り寄せて対応させて頂いております。)

他院で埋入された(施術された)インプラントの取り扱いについて

インプラント周囲炎の予防、対応

メンテナンス

特殊な歯ブラシよる歯垢の除去(ディプラーキング)

ワンタフトブラシ
ペリオブラシ
歯間ブラシ(フロスのインプラント周囲への使用は望ましくない)

インプラント用超音波洗浄チップ

インプラント専用の先端がシリコン製のチップ(滅菌可能)を使用して超音波で洗浄する方法をメインに清掃をさせて頂いております。これは通常のステンレス製の超音波のチップなどで洗浄すると土台の部分のアバットメントや歯の部分の上部構造部分の表面に傷がつき傷が、そこに歯垢、歯石が付着し易くなってしまい。インプラントの周囲の炎症が起きやすくなります。その予防のためにシリコン製チップを使用しております。


インプラント部分にいわゆるポケットがある場合はインプラント表面の(粗面:ネジの部分)の骨が吸収して(骨が溶けて)なくなっている場合が多く、ネジの部分がむき出しになっているため、歯垢が付着し易く、バイオフィルムといわれる細菌の集落が膜状に形成されています。そのような部分は粗面を除去するようにステンレスチップを用いて超音波洗浄を行います。

インプラント周囲炎の対処

Er-YAGレーザー

インプラント周囲炎の原因になっているインプラント体表面の粗面(ザラザラした部分)に付着した汚れ(バイオフィルム:細菌の集落のようなもの)や肉芽組織(炎症により無くなったインプラント周囲骨が元々あった部分にで形成された炎症性の組織)粗面表面をレーザーで一度、徹底的に除去します。
骨の喪失の範囲が大きい場合は、インプラント周囲の歯肉を開き、患部を目視できる状態で処置を行う場合もあります。更に失った骨の部分に補填材(将来的に骨に置き換わっていくもの、あるいは骨の代わりになるもの)を填入する場合もあります。これによりインプラント体周囲の組織(歯肉や骨)の治癒を待ちます。